介護士に関する様々なニュースを見かけます。中でも暴力や虐待などの事件が発覚するとメディアは鬼の首を取ったかのように報道を行っていますね。暴力や虐待は決して許されるものではありません。
ですが、虐待の芽は日常に潜んでいます。虐待の芽を早く見つけて、どうやって対処するか。この記事では、行政など様々な機関が行う研修に3度参加した私が得た知識をお伝えします。
虐待や権利擁護って難しいテーマ。私は大丈夫かしら?
大丈夫!ゆっくり確認していこう!
【結論】虐待防止法の目的を押さえて支援内容を話し合おう!
高齢者や障害者の尊厳を守る支援をチームで考えて実践しよう!
この一言につきます。順番に解説していきますので、興味があれば読んでいただければ幸いです。
【まずはそれぞれ確認】「高齢者虐待防止法」と「障害者虐待防止法」
高齢者虐待防止法の目的
この法律は、高齢者に対する虐待が深刻な状況にあり、高齢者の尊厳の保持にとって高齢者に対する虐待を防止することが極めて重要であること等にかんがみ、高齢者虐待の防止等に関する国等の責務、高齢者虐待を受けた高齢者に対する保護のための措置、養護者の負担の軽減を図ること等の養護者に対
する養護者による高齢者虐待の防止に資する支援(以下「養護者に対する支援 」という )のための措置等を定めることにより、高齢者虐待の防止、養護者に対する支援等に関する施策を促進し、もって高齢者の権利利益の擁護に資することを目的とする。
厚生労働省:高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律
障害者虐待防止法の目的
障害者に対する虐待が障害者の尊厳を害するものであり、障害者の自立及び社会参加にとって障害者に対する虐待を防止することが極めて重要であること等に鑑み、障害者に対する虐待の禁止、国等の責務、障害者虐待を受けた障害者に対する保護及び自立の支援のための措置、養護者に対する支援のための措置等を定めることにより、障害者虐待の防止、養護者に対する支援等に関する施策を促進し、もって障害者の権利利益の擁護に資することを目的とする。
厚生労働省:障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律の概要より
どちらの法律も尊厳の保持が極めて重要。尊厳を害してはいけないと記載されています。
虐待や権利利益を害するものとはなにか?
みんなは、虐待の5つの分類を覚えているかな?
虐待の5分類
- 身体的虐待→暴力的行為などで身体にあざ、痛みを与える行為や、外部との接触を意図的、継続的に遮断する行為。
- 心理的虐待→脅しや侮辱などの言語や威圧的な態度、無視、嫌がらせ等によって精神的、情緒的苦痛を与えること。
- 性的虐待→本人との間で合意が形成されていない、あらゆる形態の性的な行為またはその強要
- ネグレクト(介護や世話の放任・放棄)→意図的であるか、結果的であるかを問わず、介護や生活の世話を行っている家族が、その提供を放棄または放任し、高齢者の生活環境や、高齢者自身の身体・精神的状態を悪化させていること。
- 経済的虐待→本人の合意なしに財産や金銭を使用し、本人の希望する金銭の使用を理由無く制限すること。
福祉系資格の保有者であれば必ず勉強をしていると思います。しかし、働く中では耳にする機会は年に一回あるかないかだと思います。正直、分類について詳しく覚えて必要はないと思います。5分類に分けられている程度で覚えておけば良いでしょう。なぜなら、虐待だと決める、認定するのは我々の仕事ではないからです。
ここまで法の目的や何が虐待や権利を害する物なのかに触れてきましたね。次から現場目線で虐待について考えていきます。
【意外とある!?】あなたの職場は大丈夫?虐待の芽を見てみよう!
事例を3つ挙げますので、一緒に考えてみましょう。虐待と認定するのは私たちではありません。私たちは日々の支援内容を見つめ直す事が重要です。身近に起こり得る事について考えてみましょう。まずは気がつくことが大切です。
ケース1「デイサービスで勤務をしているAさん。排泄の時間のため、認知症の利用者さんをトイレに誘導していた。しかしトイレに着座した認知症利用者さんがすぐに便座から立ち上がり、どこかへ行こうとした為、立ち上がる利用者の肩を押さえて座り直させた。
文章を読んでいただけばわかるように、身体的虐待に相当する可能性がありますね。しか、忙しさに追われていると意外とやってしまっていたり、他の職員が行っている所を見たりしていませんか?
ケース2「訪問介護で勤務しているBさん。利用者さん宅で2人で会話をしていた。何気ないBさんの一言で利用者さんが”そんな言い方ないじゃない。心が傷ついたわ…。”と言われた。
Bさんは傷つける気なんて全くないでしょう。しかし、利用者さんが”傷ついた”と言うのであれば、心理的虐待に相当する可能性があります。このケース2については私の実体験です。。
ケース3「施設勤務をしているCさん。男性利用者さんの事を◯◯君と呼んでいた。なぜ◯◯君と呼んでいるのかCさんに聞くと「利用者本人がそう呼んで欲しいと言ったから。」と返答があった。
君だけではなく、ちゃん呼びも一緒です。柔らかいコミュニケーションの一環である事はわかります。ですが、全く事情を知らない第三者が見れば虐待や権利擁護を害していると思われる可能性がありますね。
グレーゾーンな支援、心当たりがありませんか?
私たち介護士は日夜利用者支援にあたります。その中で「グレーな支援だよね〜」なんていう会話を行っていませんか?私自身の話で言えば、訪問介護に転職をしてグレーな支援を良く見聞きする事になったと感じています。この【グレーな支援】を少なくしていく事が大切なんです。
グレーな支援はいずれ不適切な支援となり、不適切な支援が意図しているか否かに関わらず虐待に繋がっていきます。
不適切な支援の図
上に行けば行く程、色が濃くなるグレーな支援。
下に行けば行く程、色が薄くなる。最後には白い適切な支援。
ここまではわかったよ。でも実際にどうすれば良いの?
虐待防止法の目的を思い出して考えてみれば良いんだよ!
法令をもう一度思い出してみよう!
障害者虐待防止法で考えると非常にわかりやすいかと思います。障害者だけでなく高齢者にも当てはまるものではないかと私は考えています。
- その支援は尊厳が守られているか?
- その支援は自立を促す、目指す支援なのか?
- その支援は社会参加となる支援なのか?
このようにして考えると非常にわかりやすくなったと思いませんか?
介護には正解はない…だからチームで話し合おう!
介護のお仕事は人対人の仕事です。介護する側も介護される側も一個人の人間です。そして個人には価値観や感情というものがあります。
自分では「大丈夫!出来ている!」と思っても、周りから見たらどうでしょう?他者からの評価の話ではなく、自分の思い込みの話です。良くある話が利用者さんへの思い入れが強い過ぎるあまり、何でもその人に為にと思いやってしまう人がいます。これも、法令に照らしわせて考えるとどうでしょうか?
大切な事は自分の支援を他者と共有して話し合う事です。自分ひとりで決めるのではなく、チームで話し合い、自分を見つめ直すきっかけが出来るも良し。支援の質を上げるも良し。行き詰まっていた考えの突破口が出来るでしょう。そしてそれがより良い支援に繋がるのではないでしょうか。
今日の話が少しでも参考になれば幸いです。ありがとうございました。
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